当院では、骨折などの外傷をはじめ、整形外科領域全般についての治療が可能ですが、その一部を紹介したいと思います。
特に脊椎の手術や人工関節の手術に力を入れております。
1.腰痛、足のしびれ、痛み
腰痛や足にしびれある代表的な病気としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などがあります。
腰椎椎間板ヘルニア
当院では、小さい傷(約2cm)で、内視鏡による椎間板摘出術を行っております。
背中の筋肉も殆ど切ることもなく、ヘルニアを取ることができます。
入院期間も約1~2週間で退院できます(図)
内視鏡の手術
皮膚を2cm弱切開して、内視鏡をいれる筒(直径16mm)をヘルニアのあるところへ挿入し、専用の特殊な道具を使って、ヘルニアを摘出します。皮膚、筋肉の切開を最小限にして手術ができ、手術後の傷の痛みが軽くなります。
2.腰部脊椎間狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、脊髄の神経の通り道が狭くなる病気で、腰痛や足にしびれや痛みが出てきます(図)。
高齢になってくると、体を支え続けた背骨は、変形し、脊髄の通り道が狭くなり、脊髄の神経を圧迫し、 足にしびれや痛みが出てきたり、長く歩くことができなくなります。
【手術療法】
当院では、できるだけ、小さい傷でおこなうようにするために、内視鏡で手術するようにしております。
できるだけ、手術の傷を小さくし、削る骨を少なくし、脊椎を固定しない手術で行うようにしております。
3.首(頚椎)の病気
頚部脊柱管狭窄症
生まれつき頚椎の脊髄の通り道の脊柱管が狭い人(発育性頚部脊柱管狭窄症)は、脊髄が圧迫され手足が麻痺しやすい状況にあります。
少しの椎間板ヘルニアでも脊髄が圧迫されたり、年をとってくると、背骨に変形が進みます。
さらに、変形した背骨が神経を圧迫し、神経(脊髄)の通り道が狭くなり脊髄が圧迫されると、ボタンがはめにくい、字が書きにくい、コインをつまむなど細かい動作が、しにくくなったり、歩行が困難になるなど、手足に麻痺(まひ)症状が進行します。
手足の麻痺が強くなってきた場合には、神経の圧迫をとる手術を行います。
手術は、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫ですと、前方からヘルニアを除去し、骨盤から骨を取り出し、背骨の前方を固定する手術をします。
脊髄の通り道の脊柱管が広い範囲で狭く、脊髄の圧迫も広い範囲にあるような時には、首の後ろから、骨細工して、脊髄の通り道を拡大する脊柱管拡大術という手術をします。
頚椎後縦靱帯骨化症
首の背骨の後ろに、後縦靱帯(こうじゅうじんたい)という靱帯があります。
これは、本来は、柔らかい靱帯ですが、これが骨に変化して大きくなり、脊髄を圧迫する病気です。進行すると、頚部脊柱管狭窄症と同じような、手足のしびれたり、手指の細かい仕事ができなくなったり、歩くことも困難になる、などの症状が見られます。
40~50歳台の男性に多いとされています。原因については、遺伝的な病気という説もありますが、結論はまだ出てないようです。
症状が軽い場合は、装具や、ビタミン製剤などの薬物療法などがあります。
ボタンがはめにくい、字が書き難い、コインをつまむなど細かい動作がしにくくなったり、歩き難い症状が進行すると、手術をしたほうがよいと思われます。
手術は前方から靱帯骨化を取り除き、骨を移植して固定する方法(前方固定術)と、後方から椎弓を形成して脊髄の圧迫をとる方法(脊柱管拡大術)があります。
この病気は、欧米に比べると、日本人に比較的に多く、厚生労働省の特定疾患として認められており、自治体や最寄りの保健所などで、申請すると、医療費の公費負担を受けることができる場合があります。
頚部脊柱管狭窄症や後縦靱帯骨化症では、症状がないか軽くても、転倒するなどの怪我で、脊髄損傷を生じることがあるので注意が必要です。
膝(ひざ)の痛みの治療ー変形性膝関節症
膝(ひざ)は、年令とともに、関節の軟骨は、車のタイヤのように磨り減ってきます。
骨の棘(とげ)が出てきたり、関節がO脚に変形し、変形性関節症と呼ばれます。リウマチの患者さんでも同じような症状がでてきます。
関節の軟骨は、摩り減ってくると、再生されることはありません。昔は、痛みに耐えて生活を送っておりました。
膝(ひざ)関節の治療・・関節注射について
治療としては、関節の温熱療法、痛み止めの薬で痛みを緩和します。
リハビリとしては、膝を支える太ももの大腿四頭筋という筋肉を鍛えることで膝の関節が安定し、症状が軽くなることがあります。
膝を支えるサポーターも効果があります。 関節の痛みが強い時は、麻酔薬とステロイドホルモンを注射すると、痛みや炎症が一時的に消失します。
しかし、長い間ステロイドホルモンを注射し続けると、関節軟骨や骨が弱くなり、ステロイド性の関節の病気が出てきます。
また、ステロイドホルモン注射は、体内のステロイドホルモンとのバランスを崩します。
この関節注射は、一時的な処置のみで、長期、関節への注射としては、好ましくないと言われてきましたが、最近、ヒアルロン酸という薬が開発されました。
ヒアルロン酸は、大きく損傷された関節の軟骨を再生修復させることはできませんが、関節面の滑りを良くし、関節の軟骨の表面を保護し、老化を防ぐことができ、軟骨の修復を促す作用もあると言われています。
ヒアルロン酸の関節への注射は、有効で、手術以外で、唯一の関節軟骨に対する根本治療と言えます。
ヒアルロン酸というのは、軟骨の重要な成分であり、ステロイドのように関節や全身に悪影響を与えませんので、何回注射しても問題はありません。
軟骨の磨耗による炎症も抑えられるので、関節の水が、たまることも少なくなることもあります。
ヒアルロン酸の薬効が完全には、解明されておりませんが、炎症を抑えたり、関節軟骨が再生することも期待されております。
痛みの少ない関節注射
ヒアルロン酸の関節注射も、やはり注射で少し痛いです。
特に、皮膚は痛みに敏感で、注射の針を刺す時、痛みを感じ注射を嫌がる患者さんは多いです。
当院では、希望されれば、注射するところを圧迫したり冷やしたりして、表面麻酔処置をして痛みの少ない関節注射をしております。
人工関節の手術
関節の変形が大きくなり、痛みが強くなってくると、昔は、どうしようもなかったのですが、医学や工学的な生体材料の進歩により、人工関節というものが考案されました。
すり減った軟骨の表面を、人工物に置き換え、関節の痛みを無くすことができます。最近では、人工関節の材料や、手術の技術も進歩し、手術環境も進歩し、より安全な手術となっております。
当院では、皮膚の傷や筋肉の切開をできるだけ小さくする極小侵襲手術MIS(Minimally Invasive Surgery)の技術に加え、再生医療の技術で、人工関節と骨がつきやすくする工夫もしております。
人工膝関節の手術では、通常は、患者さんの体の大きさによって異なりますが、膝に約15cmないし20cmくらいの皮膚切開で手術を行います。
MISの方法ですと、8cmないし10cmくらいの傷で行うことができます。約2分の1の傷で行うことができます。
当然、切る筋肉も最小限にするため、手術後の痛みも少なくなり、リハビリもスムースに行うことができます。
5.股関節の病気
人工股関節の手術 - 前方からの手術
股関節も年令とともに、関節表面の軟骨が磨耗し、変形性股関節症になることがあります。
特に、赤ん坊の時に脱臼してしまう先天性股関節脱臼や、関節の屋根部分の臼蓋と言われる部分が、生まれつき十分に形成されていない臼蓋形成不全の人は、関節が老化しやすく、関節の軟骨が磨り減ってきます。
リウマチや関節症で、変形が強くなり、関節の痛みも強くなると、人工股関節に置き換える手術を受けると、関節の痛みがとれ歩きやすくなります。
人工股関節の手術では、股関節の後方から、お尻に15cmないし20cmくらい切って手術を行います。
人工股関節の手術においても、極小侵襲手術MISの手術手技、手術道具が開発され、小さい皮膚切開と細小の筋肉の切開で、手術ができるようになってきております。
このMISの方法ですと、8cmないし10cmくらい切って手術を行います。切る筋肉も最小限にするため、手術後の痛みも少なくなり、リハビリもスムースに行うことができます。
人工股関節の手術は、股関節を脱臼させて行うため、手術後、脱臼する危険性があります。
股関節後方からの手術では、数%に人工股関節が脱臼してしまうことがあると言われております。
当院では、その脱臼の危険性をより少なくするために、太ももの付け根の、股関節の前方からの手術(図)を行う方法を行っております。
さらに、再生医療の技術で、人工関節と骨がつきやすくする工夫もしております。
この前方からの手術ですと、股関節周囲の大事な筋肉を切ることはなく、筋肉をよけて手術するため、大きく切る筋肉がないため、術後の痛みが少なく、脱臼の危険性も減ってきます。
6.再生医療
当院は、民間の病院としては、我が国に初めて、骨髄細胞による再生医療を成功しております。
骨髄細胞は、骨、軟骨、皮膚の傷を治す力があり、難治性の皮膚潰瘍の治療、治りの悪い骨折の治療、椎間板の再生治療などに取り組んでおります。
ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
「先端医療で治す 腰・首・関節・骨折・皮膚ーここまでできた再生医療」
吉川隆章著、日経大阪PR出版